科学研究費補助金・基盤研究(C) 2021-2023年度
大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた国際比較研究
大学評価学会第67回研究会:課題研究報告(2024年12月5日 at キャンパスプラザ京都)
韓国の大学職員人事制度の現状と課題
報告者:キム・ドンジュン氏〔東義大学(韓国・釜山)職員/総務・人事チーム長〕
課題研究「教職協働」部会では、2023年8月に韓国・釜山地域の3大学(釜山外国語大学、東明大学、東義大学)を訪問し、各大学の教職員への聞き取り調査を行った。その際に東義大学で応対された総務・人事チーム長が、韓国の大学人事担当者で構成する全国組織「全国大学人事及び教育管理者協議会」の会長で、韓国の大学職員および職員組織に精通しており、キム氏から多くの情報を得ることができた。
今回の研究会ではキム氏を招聘し、韓国の大学および大学職員に係るさらに詳細かつ最新の情報を得ることとした。
はじめにキム氏から、1990年代のアジア経済危機(IMF事態)以降の大学における職場環境の変化および大学職員の人事制度について以下のような説明があった。
- 韓国の事業所全体の約61%は基本的な賃金体系すら無いが、賃金体系のある事業所では号俸給が支配的である。
- 現在、65歳までの定年延長を段階的に進めており、65歳定年に向けた国からの助言、奨励金等の支援が行われている。特に2人以上の子を持つ労働者の定年延長を優先している。
- 多くの大学でMBO方式(目標管理)や成果給を導入して、個人及び組織の業績を評価してインセンティブ(賞与、昇級等)に結びつけようとしている。
質疑応答の中では、参加者より職員組織のフラット化、人事評価制度、東義大学における課題等について多くの質問が出され、キム氏から丁寧な説明があった。特に本課題研究の関心である大学職員の採用と昇進について、一般採用職員は人事異動があることが前提であるが、定期的に異動を繰り返す人だけでなく、1つの職場に長く在籍する職員もいる。管理職はそれまでの職場、経歴とは関係なく配置される。IT系や設備管理等で本人の専門性によって採用された職員でも人事異動の対象になる。職員の採用時の雇用契約には配属部署等について「何も書かれていない」とのことであった。
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