科学研究費補助金・基盤研究(C) 2021-2023年度

大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた国際比較研究

大学評価学会第20回全国大会:課題研究報告(2023年3月5日 at 岡山理科大学)

座長:深野政之(大阪公立大学)

趣旨

 2021年4月に継続採択された第2期科研計画では、本学会が創立以来継続してきた教職協働研究の蓄積を基盤として、韓国・台湾との国際共同研究により日本、韓国、台湾での実践の中から形成されてきた大学職員の役割モデルについて明らかにすることにより、日本の大学職員に対する新たな役割モデルを提示することを目的としている。 今年度も新型コロナ禍の影響により予定していた海外大学調査ができなかったため、日本の大学職員の現状分析と大学職員論に関する理論研究に注力した。

 これまでの研究の結果、メンバーシップ型としての日本の大学の事務職員について、3つの特徴―@共同体性、A非専門性(専門性への忌避)、B事務局という組織内組織への一元化―を抽出したが、このうち、@の共同体性については、「メンバーシップ型」「ジョブ型」というモデルの提唱者である労働政策研究・研修機構労働政策研究所・濱口桂一郎所長自身は―「メンバーシップ型」という言葉自体がその共同体性を示してはいるが― 多くを語っておらず、この点については外国人研究者や国内の労働社会学、産業社会学分野の研究者による蓄積が大きい。

 一方、これら労働問題研究からのアプローチとは別に、経営学の立場からポスト工業社会における日本企業の低迷の原因を「共同体型組織」である点に求め、組織と個人の「分化」による再生を訴えているのが同志社大学・太田肇教授である。太田教授の一連の研究は、ポスト工業社会という新たな時代環境におけるメンバーシップ型の課題と対策を提示しているという点で、事務職員の「共同体性」という側面について検討する上で有益な示唆を得ることができるものと考えられる。また、太田教授は、「プロフェッショナルと組織―組織と個人の『間接的統合』―」などの著書で、非専門職とプロフェッショナルが同居する組織における両者の関係、その統合の在り方などについても研究を重ねられており、大学という組織における教員と職員の関係を考える上でこれも重要な視点となる。

 今年度の課題研究は太田教授を講師としてお迎えし、共同体と職員、そして教員の関係、大学という組織への教員と職員の統合などについてご講演をいただき、これまでの研究で抽出した日本の大学事務職員の特徴としての「強い共同体性」のもたらす課題と対応等についての議論を行う。


講演「教職員の意欲と能力を引き出す マネジメントの枠組み」 同志社大学・太田肇教授

コメンテーター:菊池芳明(横浜市立大学)

PPT資料〔印刷不可に設定しています〕

当日の現地参加19名、オンライン参加18名でした。