科学研究費補助金・基盤研究(C) 2021-2023年度

大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた国際比較研究

大学評価学会第19回全国大会:課題研究報告(2022年3月6日龍谷大学校友会館響都ホール)

1)課題研究の進捗報告と今後の課題  安東正玄(立命館大学)

(1) 活動経過報告

2017. 5.27日本高等教育学会大会で科研構想を発表
2018. 4. 1科研費補助金・基盤研究(C)に採択
2018. 7.22大学評価学会研究会で報告
2018. 8. 5- 8台湾訪問調査(第1回)
2018. 9. 2大学行政管理学会研究集会で報告
2018.12.26-29台湾訪問調査(第2回)
2019. 3. 3大学評価学会全国大会で報告/ポスター発表
2019. 8. 5- 8韓国訪問調査(第1回)/国際研究集会で日本側報告
2019. 7大学行政管理学会誌に台湾調査報告掲載
2019.12.25-29台湾訪問調査(第3回)
2020. 1.11大学行政管理学会研究会で報告
2020. 6.6-7大学教育学会第42回大会個人研究発表(発表要旨集録掲載)
2020. 7大学行政管理学会誌に韓国調査報告掲載
2020. 9. 6大学評価学会研究会(オンライン)で報告
2021. 3. 8大学評価学会全国大会(オンライン)で報告
2021. 4. 1科研費補助金・基盤研究(C)に継続採択
2021.11. 大学教育学会課題研究集会ポスター発表

(2) 第1期科研(2018-2020年度)による知見と中間的仮説

   第1期科研による検討では、メンバーシップ型としての日本の大学職員の特徴として(1) 強い共同体性,(2) 専門性への忌避(総合職志向),(3) 強い独立性を持つ〈事務局〉への一元化,の3点を抽出した.かつて盛んに論じられたアメリカ型専門職モデルへの移行が実現していないのは,日本の大学職員が「メンバーシップ型」という,欧米では一般的な「ジョブ型」とは大きく異なる雇用労働システム下にあり,システム全体の差異,例えばその〈共同体性〉を無視して「ジョブ型」に移行することは,それが職員の内発的必要性に発するものでは無かったからである.

   現段階で得られている知見と中間的仮説は以下の通りである.

   日・韓・台の大学には採用や昇進などの点ではメンバーシップ型としての同質性が見られるものの、組織内部のあり方が異なることがメンバーシップにも影響を及ぼしているように思われる。日本の大学職員に対する新たな役割モデルを提言するには、さらなる現地調査と韓国・台湾の研究者・職員との研究交流が必要である。

(3) 第2期科研(2021-2023年度)の目的と計画

   本研究の目的は,韓国・台湾との国際共同研究により,日本,韓国,台湾での実践の中から形成されてきた大学職員の役割モデルについて明らかにするとともに,特に近年の3ヶ国における大学ガバナンス改革を受け変化している現状とその課題について比較検証することにより,日本の大学職員に対する新たな役割モデルを提示することである.各国の具体的な職務のあり方,教員および大学経営者との関係,職員集団内部での幹部職員と一般職員,常勤職員と非常勤職員等の関係とその変容の比較・検討に基づき,各国のモデル抽出を行う.

   日本の大学教員と職員の協働および職員間の協働では,明示的な役割分担・職務分担だけでなく,グレーゾーンの部分がどう担われているのかなど多くの部分が暗黙知により支えられている.したがって暗黙知の重要性を認識した上で,組織内の経験を継承・発展していく仕組みを構築することが重要かつ現実に求められている.

   社会的・政策的近似性を有する韓国・台湾と比較研究することにより,日本にも見られる役割モデルに注目することによって,各国の特徴,すなわち職員の機能や役割が抽出され,構造的な差異と共通の課題を見出すことができる.

   また日本においてジョブ型採用の動きが企業だけでなく大学でも検討が開始されているところがあり、台湾や韓国の大学職員のあり様が参考になり得ると言える。

   大学における教職協働と言うキーワードにおいて、職員の雇用のあり方と能力向上、職員の位置付け(日本の場合、職員が部長クラスや理事になるケースも少なくない)の違いによる大学ガバナンスの有り様などを国際比較して今後明らかにしていく必要もあり課題は多い。

2)民間企業の“ジョブ型”人事制度導入への動きと大学職員” 報告者:菊池 芳明(横浜市立大学)

3)大学職員の専門性開発と専門職論” 報告者:光本 滋(北海道大学)