科学研究費補助金・基盤研究(C) 2021-2023年度
大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた国際比較研究
大学評価学会第21回全国総会:課題研究報告(2024年3月3日 at 早稲田大学早稲田キャンパス)
「第3期科研計画に向けた報告」(深野政之・大阪公立大学)
2021年4月に継続採択された第2期科研計画では、本学会が創立以来継続してきた教職協働研究の蓄積を基盤として、韓国・台湾との国際共同研究により日本、韓国、台湾での実践の中から形成されてきた大学職員の役割モデルについて明らかにすることにより、日本の大学職員に対する新たな役割モデルを提示することを目的としている。
2018年には2度にわたる台湾での訪問調査,2019年には韓国と台湾で訪問調査を行い,韓国においては大学行政管理学会との共同企画により国際研究集会を開催した.2023年8月には韓国・釜山の3大学で訪問調査を行った.また学会誌への調査報告採録(2回),学会・研究会報告(5回)など,当初の研究計画を超える調査活動と研究成果発信を行った.理論研究においても,コロナ禍により海外訪問調査ができなかった時期に重点的に文献調査と,韓国・台湾の法制度に係る情報収集を進め,日本及び欧米諸国との比較検討を進めることができた.これまでの現地調査及び情報収集を踏まえ,現段階で得られている知見は以下の通りである.
- 韓国では一括的な採用形態と定期的な人事異動が存在し,特定の専門性に基づいて採用された職員であっても人事異動の対象となることが複数の大学で確認された.)
- 韓国では,1990年代までは組織や階層性において日本の事務組織との共通性が存在していたが,近年の改革により大きく変容しており,特に組織のフラット化は意思決定等の迅速化に寄与しているとの認識が,調査対象とした複数の私立大学で示された.
- 台湾においても採用,人事異動に関してメンバーシップ型との類似性が認められたが,一括採用と定期人事異動を行う大学がある一方で,特定部門での採用と本人希望による異動を組み合わせる大学も存在しているなどジョブ型に類する特徴も確認された.
- 韓国・台湾とも,職員は学内において“事務局”のような形で一元的に組織化されてはおらず,教員組織(学部等)と同様に学長のもとにある個別部署に所属している.
日・韓・台の大学には採用や昇進などの点ではメンバーシップ型に類する同質性が見られるものの,それ以外の様々な相違に加え,近年の改革に伴う変容も進んでいる. 日本の職員は具体的な職務として規定されない,明示的な職務分掌や役割分担がない様々な業務を遂行している.1990年代までの韓国・台湾も同様であったが,事務組織のフラット化,人事評価等の改革に伴って韓国・台湾とも独自の変化が見られる.
能力向上に基づく職員の内発的な役割拡大のためには,現状を踏まえた新たな制度設計と意識改革が必要とされる.日本の民間企業等に見られるメンバーシップ型モデルと同様に,メンバーシップ型雇用労働システムをもつ韓国・台湾の大学職員との比較により,組織内に蓄積された暗黙知の継承・発展をも可能とする新たな役割モデルを提示することを目指す.
「メンバーシップ型としての大学事務職員の3つの特徴と今後の展望」(菊池芳明・横浜市立大学)
「国立大学事務職員制度の分析」(光本 滋・北海道大学)
指定討論 (細川 孝・龍谷大学)
当日の現地参加??名、オンライン参加??名でした。