科学研究費補助金・基盤研究(C) 2018-2020年度
大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた日・韓・台比較研究
2018年度(1年目)は、大学行政管理学会関東地区研究会との共同企画により、2度にわたって台湾の9大学と教育部を訪問し、現地教職員へのインタビューと意見交換を行った。
第1回台湾訪問調査【2018年8月5日〜8日】参加者14名
1)台湾教育部(日本の文部科学省に相当)
- 台湾の大学・短大進学率は1970年代には10%程度だったのが1990-2000年代に急増して2010年に70%に達し,現在は71.24%である.都市部ではほぼ100%の高校卒業者が高等教育機関に進学している.
- 日本と同様に少数の国立大学(46大学・学院)の威信が高く、多数の私立大学(108大学・学院)に多くの学生(約63%)が学んでいる。
- 日本以上に少子化が急激に進行しており,学生の集まらない大学,経営が悪化している大学の統合や廃止が課題となっている.
- 世界大学ランキングの上位入りが課題であり、国立の上位大学への研究資金集中と教育研究の質向上(高等教育深耕事業)に取り組んでいる。
2)淡江大学(私立) 学生数 24,956名 設立年1950年
(1)台湾の入試制度、(2)職員人事制度の概要、(3)教育の質保証や卒業生組織の活用などについて質問、意見交換を行った。教育型大学であり、学生や社会のニーズに応じて実学も踏まえた教育体制を整えている。台湾の雑誌による調査「台湾大企業2,000社が選ぶ学生」ランキングにおいて常に私学でトップにランクされる大学である。
3)中国文化大学(私立) 学生数約32,000名 設立年1962年
職員や教員の研修については、学外で実施されるセミナーへの参加を奨励しているほか学内でのセミナーの開催に力を入れている。少子化対策についてはこれまで以上に募集広報に力をいれていくという回答があった。
4)国立政治大学(国立) 学生数10,470名 設立年1927年
台湾教育部よりトップ大学計画の12校に選定されており、国際競争力を有す大学を目指している。職員研修の面では、国際交流を通して中国本土の大学と協定校職員交流があり、3か月から6か月間派遣及び受け入れがある。また、EUの大学とも職員交換があり、経費をEU持ちで派遣したりもしている(期間:1週間から10日、年間8名枠)。職員の中には博士課程在学中の者もおり、主に夜に大学院で学んでいるが、平日1日は仕事休んで大学院で学ぶ制度もある。
5)実践大学(私立) 学生数9,538名 設立年1958年
ミッション「力行実践・修斉治平」、ビジョン「創新・実践・至善」を明確に打ち出し、内部環境や外部環境の分析・評価(SWOT分析)を行い自大学のポジショニングを見極めている。そのうえで、「選択と集中」を行い、これから「アジア太平洋地域における優良な実用型の教育重点大学」になることを発展の方向性としている。その実現のため4つの教育目標(「倫理化」「芸術化」「科学化」「生産化」)、ならびに6つの発展戦略(ドメイン)を定め、その実現のためにそれぞれ行動指針を設定し実践に移している。