科学研究費補助金・基盤研究(C) 2018-2020年度
大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた日・韓・台比較研究
大学評価学会第18回全国大会:課題研究報告(2021年3月7日:オンライン開催)
2017. 5.27 | 日本高等教育学会大会で科研構想を発表 |
2018. 4. 1 | 科研費補助金・基盤研究(C)に採択 |
2018. 7.22 | 大学評価学会研究会で報告 |
2018. 8. 5- 8 | 台湾訪問調査(第1回) |
2018. 9. 2 | 大学行政管理学会研究集会で報告 |
2018.12.26-29 | 台湾訪問調査(第2回) |
2019. 3. 3 | 大学評価学会全国大会で報告/ポスター発表 |
2019. 8. 5- 8 | 韓国訪問調査(第1回)/国際研究集会で日本側報告 |
2019. 7 | 大学行政管理学会誌に台湾調査報告掲載 |
2019.12.25-29 | 台湾訪問調査(第3回) |
2020. 1.11 | 大学行政管理学会研究会で報告 |
2020. 6.6-7 | 大学教育学会第42回大会個人研究発表(発表要旨集録掲載) |
2020. 7 | 大学行政管理学会誌に韓国調査報告掲載 |
2020. 9. 6 | 大学評価学会研究会(オンライン)で報告 |
(2) 台湾の大学訪問調査
2018年度(1年目)は、大学行政管理学会関東地区研究会との共同企画により、2度にわたって台湾の9大学と教育部(日本の文科省に該当)を訪問し、現地教職員へのインタビューと意見交換を行った。しかし2018年の訪問調査は大学行政管理学会関東地区研究会との共同企画であり、日本臺灣教育中心にアレンジを依頼したため、国際交流(留学生の受入・派遣)の話題が中心となっていた。このため2019年度(2年目)は、台湾の大学における「職員」の役割についてさらに掘り下げて実態を調べるため、科研チーム独自の企画として淡江大学と長栄大学を再訪問し、各大学で職員5名程度に直接インタビューを行った。
事前学習では台湾はジョブ型雇用システムが一般的とのことであったが、調査した私立大学では職員採用や人事異動等にメンバーシップ型の特徴が観られた。 台北の大規模私大である淡江大学では、上級職員に専門職採用があるが一部に留まり、一般職員は新卒一括採用で人事異動もある。自大学の大学院に在学中の一般職員もいるが、昇進が保証されているわけではないとのことだった。台南の小規模私大である長栄大学では、ほぼ日本と同様の一括採用・人事異動有のシステムであった。
台湾では、人事と会計、図書館職員は人事法、会計法、図書館法の規定により専門職である必要があり、一般職員とは全く別の採用、待遇であるとのこと。また大学法の規定により教務長、学生事務長は教員である必要がある。日本で言う事務局長というポストが無く、一般職員でも直属の上司が教員であることが多い。このことは昇進の機会が少ないことにつながり男性職員が少ないことの一因でもあるが、一般職員の大学院進学や資格取得へのモチベーションに結びついていると見ることもできる。
(3) 韓国の大学訪問調査
韓国大学訪問調査は2019年8月に、慶熙大学水原キャンパスにおける国際研究集会と、現地8大学の教職員へのインタビューと意見交換を行った。2018年の2回にわたる台湾訪問調査と同様に、大学行政管理学会関東地区研究会との共同企画であり、慶熙大学の国際交流部にアレンジを依頼したため、国際交流(留学生の受入・派遣)の話題が中心であった。韓国については2020年に予定していた現地調査ができなかったため、2019年に台湾で実施した本チームによる独自調査と同様に、今後、職員への聞き取り調査を重点的に行う予定である。
(4) 現段階で得られている知見と中間的仮説
これまでの現地調査および情報収集を踏まえ、現段階で得られている知見と中間的仮説は以下の通りである。
- 韓国・台湾とも教員が事務管理職を兼務していることが多く、また上級職員の中に少数ではあるがアメリカ式のジョブ型雇用と専門職能資格制度が見られる。
- 多くの一般職員は日本と同様の一括採用であり、人事異動もあることからメンバーシップ型に近い特徴を持っている。部署別採用もあるが、採用後数年で人事異動の対象となる。比
- 韓国・台湾とも、職員は学内において〈事務局〉のような形で一元的に組織化されてはおらず、教員組織(学部等)と同様に学長のもとにある個別部署に所属している。
- 台湾で一般職員に大学院での修学が奨励されるのは、社会人大学院が普及しているという一般的事情とともに、所属長が教員であることの影響もあるのではないか。
日・韓・台の大学には採用や昇進などの点ではメンバーシップ型としての同質性が見られるものの、組織内部のあり方が異なることがメンバーシップにも影響を及ぼしているように思われる。日本の大学職員に対する新たな役割モデルを提言するには、さらなる現地調査と韓国・台湾の研究者・職員との研究交流が必要である。